ボイスレコーダーも失敗に終わる
あの時ばかりは、自分の不器用さを恨みました。
母は私のことをいつも器用だと褒めてくれたけど、そんなことなかったよ、お母さん・・・。
何度か録音ボタンを押そうとしても、急にモラハラ夫の機嫌が直ってしまったり、珍しく長期間トラブルが無かったりして、なかなか証拠をおさめる機会が訪れませんでした。
そんな中で巡ってきた大チャンス。
その日、息子とクリスマスの飾りつけや当日のごちそうについての話をしていて、そのままツリーも飾り付ける予定でした。
そんな中でいきなり怒り出した夫。
今考えても何がきっかけだったのかが分からないのですが、ずっと「片付けろって言ったのに片付けてない!」とわめいていました。
でも、部屋を見渡してみても、いつもと変わる所はありません。
長い休みに入って、学校から持ち帰ったものの置き場所が無くてそのままになっているものが数点ある程度。
これは部屋が狭いからどうにもならず、もし置き場所を決めるのならこちらが確保してあげなければなりません。
スペース的に無理なので、当分は部屋の隅に置いておくしかないだろうと考えていました。
それは夫も分かっているはず。
それなのに、息子に向かって「片付けろ!」と怒鳴りつけ、そして学校用品を投げ捨てました。
その時点でもう息子は涙目。
私も腹が立って
「何でそんなことをするのよ!」
と言いながら、( ゚д゚)ハッ!としました。
そうだ、このタイミングで録音できれば立派な証拠になる!
私は常日頃からずっと身につけていたボイスレコーダーを思い出し、ポケットの中にそっと手を入れました。
安いので、カチッという音は多少は鳴ってしまいます。
でも、今は大声で怒鳴っている最中なので気づかれないはず。
そう思ってボタンを押したところ、運悪くそのタイミングだけ静かになってしまい、想像を超えるような大きな音が。
夫は前回のことから私に対して不信感がありますから、とても怖い顔でこちらに近づいてきました。
万事休す。
あとはもうどうやって誤魔化すか、そればかりが気になり頭を働かせようとするのですが、良い案が浮かびません。
「ポケットの中に何が入ってるの?」
明らかに怒っている声です。
「出して」
夫に言われて、私は恐る恐るポケットの中のボイスレコーダーを出しました。
こういう時、粘って数分稼げたとしても、後から出てきたら余計に怒るのです。
だから正直に言ってしまった方が良いかもしれない、という開き直りの気持ちもありました。
見た瞬間にそれが何なのかを察知した夫。
そのまま玄関の方に投げつけて、ボイスレコーダーは鈍い音を立てながら靴の傍に落ちました。
「この間からさー、何してんの?」
苛立った様子で睨みつけるような視線を送る夫の前では、何か言おうとしても声が出ません。
「あんま、ふざけたことしてんじゃねーぞ」
その後もグダグダと私への文句を言っていましたが、ふと何かを思いついたように先ほど投げつけたボイスレコーダーを拾い上げました。
「これは預かっておくから」
せっかく購入したボイスレコーダーが、まさか夫に取り上げられてしまうなんて。
器用な人ならもう少し上手く出来たんじゃないか、とか安い機種を買ったから大きな音が鳴ってしまったんじゃないか、とか色々なことを考えながらも、悔しくて涙が出てきます。
そんな様子をあざ笑うかのような表情で、冷たい視線を向ける夫。
とばっちりで息子までターゲットになってしまいました。
「お前だって自分のこともろくにできねークセに、クリスマスなんてやれると思うなよ!」
飾り付けようと袋から出しておいたクリスマスツリーも、「仕舞え!」と指図します。
それでも「クリスマスをやりたい」と珍しく頑なに動かない息子。
こんな風に自分の意思を通そうとすることなど滅多にないことなので、できればツリーの飾り付けをこのままやらせてあげたいけど、どうやら叶わなそうです。
「仕舞えって言ってんだろ!聞こえねーのかっ!捨てるぞ!!!」
あまりの大声に二人とも体がビクッとなり、息子は私たちに背を向けてしまい始めました。
分かってます。
息子は泣いているのです。
だけど、その涙を見られたくない。
今回のことは私のミスが引き金になってしまったので、数日間は悲しさと息子に申し訳ない気持ちでろくに眠れませんでした。
夫はというと、私の不穏な動きを察知したからか、いつもよりも更に敏感になってしまい、簡単には動けそうにない状態になってしまいました。
家にいる間は四六時中見張られているような感じだし、帰宅が数分遅れるだけでも怪しまれる始末です。
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